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生産性向上推進体制加算、Ⅱだけ取っても元は取れません
加算Ⅰは月100単位、加算Ⅱは月10単位。この10倍差を知らずに機器を買うと投資が回収できません。Ⅰ・Ⅱそれぞれの要件と、定員50名で年いくらになるかの概算、どちらを狙うべきかの判断基準を整理しました。
生産性向上推進体制加算について、施設の方とお話ししていて一番よく起きている誤解があります。
**「加算Ⅰと加算Ⅱは、単位数が10倍違う」**ということが共有されていないまま、加算Ⅱを目標に機器を選んでしまっているケースです。
Ⅱは月10単位、Ⅰは月100単位です。ここを取り違えると、機器代を払ったのに加算収入で回収できない、という結果になります。要件と金額を並べて整理します。
単位数
| 単位数 | |
|---|---|
| 生産性向上推進体制加算(Ⅰ) | 月100単位 |
| 生産性向上推進体制加算(Ⅱ) | 月10単位 |
利用者お一人あたり、1か月あたりの単位数です。
1単位を10円として概算すると(実際の単価は地域区分とサービス種別によって変わります)、定員50名が満床の施設で、年間およそ次の金額になります。
- 加算Ⅱ … 月5,000円 → 年6万円
- 加算Ⅰ … 月5万円 → 年60万円
加算Ⅱの年6万円という数字を見てから、機器の見積りを見ていただくと、判断が変わることが多いです。
要件の違い
要件は5つあり、Ⅰのほうが重くなっています。
(1) 委員会での取組(Ⅰ・Ⅱ共通)
生産性向上委員会で、次の4項目について検討と、実施状況の定期的な確認を行います。
- 介護機器を活用する場合における利用者の安全及びケアの質の確保
- 職員の負担の軽減及び勤務状況への配慮
- 介護機器の定期的な点検
- 生産性向上を図るための職員研修
(2) 職員の業務分担の明確化(Ⅰのみ)
加算Ⅰでは、これに加えて「職員の業務分担の明確化等」による生産性向上について、検討・取組・実施状況の定期的確認までを行う必要があります。
(3) 介護機器の活用 ─ ここが最大の差
対象となる介護機器は、次の3種類です。
- 見守り機器 … 利用者がベッドから離れようとしている状態、または離れたことを感知できるセンサーで、その情報を外部通信機能で職員に通報できるもの
- 職員間の連絡調整の迅速化のためのICT機器 … インカムなど。LINE WORKS、Chatwork、Slack などのビジネスチャットツールも含まれます
- 介護記録のためのICT機器 … 介護記録ソフトウェアやスマートフォンなど。データの入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するものに限られます
そして、
- 加算Ⅱ … 3種類のうち1種類以上を使用する
- 加算Ⅰ … 3種類すべてを使用する。かつ見守り機器は全ての居室に設置する(全ての利用者を個別に見守ることが可能な状態)
いずれの場合も、②の連絡調整の機器を使う場合は、同一の時間帯に勤務する全ての介護職員が使用する必要があります。一部の職員だけが持っている状態では要件を満たしません。
(4) 厚生労働省への実績報告
事業年度ごとに報告します。加算Ⅱは評価項目1〜3、加算Ⅰは評価項目1〜5です。
(5) 生産性向上の成果(Ⅰのみ)
加算Ⅰでは、評価項目1〜3について成果が確認できることまで求められます。体制を整えるだけでは足りません。
どちらを狙うべきか
上の要件と金額を突き合わせると、判断は割とはっきりします。
加算Ⅱは「新しく買う理由」にはなりません
年6万円のために、見守り機器やインカムを新規に導入すると、ほぼ確実に赤字です。
加算Ⅱが意味を持つのは、すでに介護記録ソフトを使っている施設です。3種類のうち③を満たしている施設は珍しくありません。その場合、追加の機器代はゼロで、委員会の設置と運営、そして実績報告だけで10単位が付きます。ここは取り漏らしになっていることが多いので、確認する価値があります。
つまり加算Ⅱは、「今あるもので取れるかを確認する」加算です。
加算Ⅰは投資判断として成立します
年60万円が入るのであれば、機器代の回収計画が立ちます。ただし、
- 見守り機器を全居室に入れる
- インカム等を同一時間帯の全介護職員に配る
- 記録のICT機器も入れる
- そのうえで成果を数字で示す
という4点が同時に必要なので、単発の買い物ではなくプロジェクトになります。定員が大きい施設のほうが、1台あたりの回収効率は良くなります。
「Ⅱから始めてⅠへ」は現実的です
制度上、Ⅱを算定しながら機器を揃えてⅠへ切り替えることはできます。予算を分けたい施設には、この順番をお勧めしています。
見落とされがちな点
委員会は加算を取らなくても必要になります
生産性向上委員会の設置は、加算を算定するかどうかとは別に義務化されています。ただし3年間の経過措置があり、令和8年度末(2027年3月31日)までは努力義務という扱いです。
つまり2027年4月からは、加算を取らない施設でも委員会が必要です。この点は別の記事で詳しく書きました。
委員会は他の会議と一体で運営できます
事務負担軽減の観点から、事故発生の防止のための委員会など、他の会議と一体的に設置・運営することが認められています。新しく会議を1つ増やす必要はありません。テレビ電話装置等を使った開催も可能です。
議事概要の提出を求められることがあります
自治体から委員会の議事概要の提出を求められる場合があります。開催した記録が残っていないと、後から作ることはできません。1回目から様式を決めて残してください。
委員会の名称は自由です
正式名称は「入所者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会」ですが、目的が満たされていれば別の名称でも差し支えないとされています。すでに生産性向上の会議がある施設は、そのまま使えます。
対象サービス
施設系サービス、居住系サービス、多機能系サービス、短期入所系サービスが対象です(介護予防サービスを含むものがあります)。訪問系のみを運営されている場合は対象外です。
当社では、加算Ⅱの「今あるもので取れるか」の確認から、委員会の立ち上げ・議事録の様式・年1回の実績報告、そして加算Ⅰを狙う場合の機器選定と成果の実証までをお手伝いしています。ご相談は無料です。
介護報酬の算定可否は最終的に指定権者の判断によります。届出の前に、必ず所管の自治体にご確認ください。
出典
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」および留意事項通知(老高発0315第4号 令和6年3月15日/令和6年3月29日改正)
- 公益財団法人 介護労働安定センター「生産性向上のための委員会 と 生産性向上推進体制加算 解説資料 Ver.3.0」